三田ガーデンヒルズ、その上質の先を描く。 -東京都 港区 M邸-

建築やインテリア、周囲の環境まで含めて、その場所で過ごす時間を楽しむ。
住まいを選ぶときも、ただ「どこに住むか」ではなく、そこで「どのような時間を持てるか」を大切にする人がいる。
NOT A HOTELに象徴されるのは、そのような考え方だ。
泊まるためだけの場所ではなく、建物や空間そのものを味わいながら、その日の気分や目的に寄り添うひとときを持つ。
その感覚を、都心の住まいにも重ねてみる。

三田ガーデンヒルズには、庭園やラウンジなど、住まいの内側だけではない豊かな環境が広がる。
その場所全体の魅力を感じながら、自分の部屋では自分らしいスペースを保つ。
今回ご紹介するのは、そのような住み方を思い描きながら整えた、この一室だ。
既存の内装には、ジャパンディを思わせる素材感と静かな趣があった。
床タイルや桜の突板仕上げのキッチンも、この住戸がもともと持っていた魅力。
だからこそ、すべてを変えるのではなく、そこにあるものを起点に考えた。
床とキッチンの色・素材をベースに、家具や壁面をどう組み合わせれば、この場所らしさを残しながら、オーナーの好みにも寄り添えるのか。
上質な家具や素材を取り入れながらも、華美になりすぎない。
都会的でありながら、落ち着いてくつろげる——
そのバランスを探るところから、今回の住戸づくりは始まった。
そのうえで見直したのが、LDKのあり方だ。
竣工:2025年7月
立地:東京都港区
目次
- 個室2室を取り込み、広がりのあるLDKへ
- 石と木の空間に、家具のやわらかさを重ねる
- 100インチのテレビを、空間の一部として
- 残したものから、LDKの素材を組み立てる
- 光を重ねて、夜のLDKへ
- 玄関から、LDKの余韻につなぐ
- 窓の向こうまで、ひとつの景色として
- 三田ガーデンヒルズ、その上質の先を描く
2部屋を取り込み、広がりのあるLDKへ
今回の住戸づくりで焦点となったのは、日中、活動の中心となるLDKの広さだった。
ヒアリングを重ねるなかで、個室の数をどう確保するかよりも、家族や人が自然と集まる場所にゆとりを持たせることが、暮らしの豊かさにつながると考えた。
そこでRe:Mansionが提案したのが、隣接する2室をLDKに取り込むプランだ。
⬛︎リノベーション前と後の間取り比較

寝室は1室にまとめ、その分、LDKを大きくする。
部屋を細かく分けるのではなく、ひとつの場所に、いくつもの過ごし方が重なる。
目指したのは、ホテルスイートのように、どこにいても窮屈さを感じさせない、伸びやかな構成。
2室を取り込んだことで、それぞれの部屋に分かれていた窓も、ひとつの空間のなかへ。
光や外の眺めまで、ひと続きのLDKで感じられるように。
そのような間取りを、施主と相談しながら、Re:Mansionから提案した。
そして、その空間を形にする段階で、家具のことも考え始めた。

※実際のご提案内容をもとに作成したイメージパースです。
「家具を先に決めなければ、空間全体のバランスをつくるのは難しい」
今回は、Re:Mansionからブランドのショールームへ施主をご案内し、実際に家具を見ながら選定した。
「これを置いてみたい」「この色がいい」
施主の感性を大切にしながら、選ばれた家具が空間のなかでどう生きるかを検討していく。
どのような配置なら家具の魅力が際立つのか。
どのような壁や床なら、その色を生かせるのか。
家具を選びながら、内装や照明との関係までひとつずつ整えていった。
石と木の空間に、家具のやわらかさを重ねる

リビングには、Molteni&C「OCTAVE」のニュアンスグリーンのL字ソファ。
ゆったりと身を預けられる大きさを確保しながら、窓辺を塞ぎすぎない位置へ。
大きなLDKだからこそ選べるサイズ感で、くつろぐための居場所をつくった。
ダイニングには、Molteni&C「GATWICK」楕円形の大理石テーブルと、「DEVON」のダイニングチェアを。
4〜6人で囲める大きさを持たせながら、角のないフォルムで圧迫感を抑える。
大理石の重厚さがありながら、どこか肩の力が抜けている。そのさりげなさが、広いLDKによく馴染む。

ソファの前には、「TESO」。
透明なガラス天板と優美なスチールベースからなる、Molteni&Cの傑作コーヒーテーブル。
ユニークなデザインでありながら、ノイズレスなデザイン。床の美しい表情をそのままに、視界を遮ることなく、空間の広がりを感じさせてくれる。
サイドには、ふたつの円形天板を組み合わせた「VICINO TABLE」を。
ソファまわりに必要な機能を備えながら、複数のテーブルを置くよりもすっきりと収まる。
ソファ、ダイニング、センターテーブル。
それぞれの大きさや距離を見ながら、空間の奥に設けた100インチのテレビ壁面まで含めて配置を決めた。
くつろぐ場所と食事をする場所が、近すぎず、離れすぎない。そのバランスを整えたLDKだ。
100インチのテレビを、空間の一部として


テレビは壁掛けとし、造作の中へできるだけ薄く、フラットに。
テレビボードのように奥行きのある家具を置かず、壁面そのものの厚みを抑えた。

画面のまわりには、黒のカラーガラスを。
テレビの黒と周囲をつなぐことで、100インチという大きさがありながら、画面だけが浮いて見えないようにした。
その周囲には、木質のリブやエクリュのカラーガラスを。リブの裏には収納も忍ばせ、見せるものと隠すものを一つの面に収めている。
さらに、水平垂直方向に光が伸びるよう、間接照明を組み込んだ。
日中は、タイルや木が持つ素材の表情をそのままに。夜には、光がその質感を際立たせ、空間に豊かな陰影を生み出す。
時間によって表情を変える壁面が、LDKに1日の移ろいを感じさせてくれる。

テレビの横には、NEW LIGHT POTTERYの「Solaris」を3灯。
φ250を1灯、φ200を2灯とサイズを変え、それぞれ高さをずらした。
サイズの異なる3灯が、端正な空間にほんの少し動きを添える。
透明なガラスシェードからこぼれる光が、背後のタイル壁にもほのかに届く。タイルに柔らかな陰影が生まれ、夜のLDKに温かな気配をつくる。
大きなテレビを置くための壁ではなく、ソファやダイニングと向き合いながら、LDK全体をまとめる壁面。
画面も、木やガラスも、収納も、光も。それぞれを単独で見せるのではなく、ひとつの面として成立させている。
残したものから、LDKの素材を組み立てる


LDKの床には、もともと使われていたものと同じタイルを調達し、個室2室を取り込んで広げた部分までつなげた。
キッチンの桜の突板仕上げも、そのままに。

⬛︎壁面 マラッツィ チェメンタム アッシュ (マット)/MM3U
残した素材をベースに、キッチンから続くメインの壁面には、マラッツィジャパンの「チェメンタム アッシュ マット」を採用。
石を思わせる繊細な表情とマットな質感が、艶のある床に落ち着いたコントラストを添える。
そこに、ニュアンスグリーンのソファや大理石のダイニングテーブルを配した。
石やタイルの硬質な素材に、木やファブリックの温もりを重ねることで、空間に心地よいコントラストを生み出している。

そして、視線を上へ。
折り上げた天井の内側には光源を隠し、天井面へやわらかく光を回した。
足元には、横へ伸びる大判タイル。
頭上には、折り上げたラインに沿って浮かぶ光。
床と天井、それぞれに異なる方向の線をつくることで、広げたLDKに奥行きを持たせた。
光を重ねて、夜のLDKへ

ひとつの光ですべてを照らすのではなく、いくつもの場所に光を置いていく。
天井や壁面の間接照明に加え、家具にも光を仕込んだ。
キッチン側では、既設のダウンライトによる均一な照らし方を見直し、器具の存在感が小さいマイクロピンホールダウンライトを配置。
明るさだけを求めるのではなく、照らしたい場所に合わせて光を置く。
床の艶、壁の質感、家具の輪郭。
必要なところに光が届くことで、夜には昼と違う見え方が現れる。
場所ごとの表情に合わせて光を整える。その柔軟さも、Re:Mansionらしい設計のひとつだ。
玄関から、LDKの余韻につなぐ

玄関からLDKへと導く、ひとつの余白に。
そこには、ダークなニッチに収めたひとつのオブジェがある。
上から落とした光が、そのかたちを静かに浮かび上がらせる。
明るく照らして存在を主張するのではなく、少しだけ陰を残すことで、玄関に小粋な焦点をつくった。
ふと目に留まり、少しだけ立ち止まる。
そんな時間が、玄関にもあっていい。

玄関とLDKをつなぐのは、Raikiのガラス扉。
玄関でもリビング側の光を感じられるよう、LDKの入口をガラスドアに変更し、さらにドア横の開口も広げた。
ガラス部分には、プラチナベージュの金属ルーバーを細かなピッチで。
透明感を残しながら、細かな線が玄関とLDKの境目に繊細なニュアンスを添えている。
窓の向こうまで、ひとつの景色として

窓まわりには、ハンターダグラスの「Silhouette Shade」を。
3分割されたシェードは電動で操作でき、時間や天候に合わせて光の入り方を細やかに調整できる。
光をすべて遮るのではなく、ほどよく透かす。
下ろしたときも窓まわりを重く見せず、グレージュやファブリックを重ねた室内にすっと馴染む。
昼は、窓の向こうから入る光を。
夕暮れを過ぎると、バルコニーの植栽に灯りがともる。
室内と外をきっぱり分けるのではなく、窓の向こうまで含めて、ひとつの眺めとして考えた。
玄関からLDKへ、そして窓の向こうへ。
景色が少しずつ移ろい、家に入った瞬間から、これから過ごす時間へと意識がゆるやかに切り替わっていく。
三田ガーデンヒルズ、その上質の先を描く
大きなLDKは、使い方をひとつに決めるためではなく、暮らし方を限定しないためのもの。
仕事を終えた夜には、ソファに身を預けてゆっくりする。
人を招いた日は、楕円形のテーブルを囲み、食事のあとも余韻を楽しむ。
ひとりの時間には、照明を落として映画を観る——
普段の住まいとして。
東京で仕事をするときの拠点として。
地方と東京を行き来する暮らしの一室として。
あるいは、大切な人を迎える場所として。
使い方をひとつに決めないからこそ、住む人のスタイルに合わせて、この部屋のあり方も変わっていく。
「自分が住みたいと思える部屋でなければ、お貸しできない」
この住戸をつくるとき、施主が大切にしたのは、そんな思いだった。
三田ガーデンヒルズがもつ魅力をそのまま受け取るのではなく、既存の内装を読み取り、オーナーが選んだ家具や好みを空間へ落とし込む。
LDKのあり方を変えることも、既存の床を残すことも、ひとつひとつの家具を選ぶことも。
何を加えるかだけでなく、何を残し、どこに手を入れるか。
その判断を重ねた先に、この一室ならではの住まいが生まれた。
※記事内で紹介している家具は、現在の賃貸住戸には含まれていません。今回の空間に合わせてRe:Mansionがコーディネートしたもので、家具についてもご希望に応じて提案が可能です。なお、こちらの物件につきましては、100インチのテレビや窓まわりは、今回のリノベーション後も残した状態で貸し出される予定です。
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